
養育費は、子供を育てるために絶対に必要な費用です。ところが実際に母子家庭になり、養育費の不払いを経験されている方は8割以上にも達し、養育費が全く支払われない・少したつと支払われなくなる等がとても多いのです。
不払いへの対応には、段階的にまず自分で出来る手紙やメール、電話等での催促などがありますが、期限を区切っての要求も効果なし、内容証明郵便を送っても効果なしで不払いが続く場合、最終手段に「強制執行」があります。
養育費の場合は、一般的な強制執行よりも支払ってもらい易い仕組みになっています。
養育費の強制執行に必要な理由とは?
- 取り決めた期日を守らず支払わない
- 何か月も養育費の支払いを行わず滞納している
- 連絡しても「忙しい。後で必ず」というが一向に振り込まれない
- 面会させてもらえないから支払わない(面会と養育費は別物)
- 自分の子だと思えなくなった
- メールや電話をしてもでない・行方不明である
- 再婚し、支払い義務がなくなったと思っている
以上が主な理由となります。
強制執行の手続きをする前に確認すること!
- 執行認諾文言付公正証書があるか?
執行認諾文言「強制執行されても文句無いよという文言」付きのものに限ります。 - 相手の現住所を把握できているか?
相手の所在を把握している事も条件となります。もし分からない場合は、調査が必要です。 - 相手の財産を把握しているか?
もし財産がなければ費用が無駄になってしまうということを念頭に置いて下さい。
裁判所は相手が誰で、相手がどのような財産を持っているかまでは調査してくれません。
大変な作業ですが、これは自分で調べなければなりません。
差し押さえを行う場合には、「どこにある」「どの財産を」差し押さえてほしいのかを裁判所に説明しなければならないのです。
相手が会社員の場合、給与債権を差し押さえすれば一番回収できる可能性が高いと思われます。そうなると給料と預貯金口座の差押えが考えられます。
具体的に欲しい情報は、- 給与を差し押さえるのであれば、勤務先の情報
- 預金口座を差し押さえるのであれば、銀行名、支店名、口座番号(分かる場合)などの口座の情報
を裁判所に伝える必要があります。
強制執行(差し押さえ)を行う為の手続き
上記の条件が整っていれば、強制執行を行うのに必要な書類やその手順・手続きを行いましょう。
公証役場に離婚の際作った公正証書を持っていく
まずは、離婚をする時に公正証書を作った公証役場に行きます。
お金をもらう方に渡されている公正証書の正本を持って(紛失した場合は再発行ができます)公証役場に行き、「執行文の付与」を申し立てます。
執行文とは離婚公正証書に差し押さえなどをする力があることを公証人が証明するもの
必要書類を集めて、債権差押え命令の申立書の作成を行う
強制執行を行う時に必要な書類は4つあります。
- 離婚公正証書正本(執行文の付与されたもので前述紹介した正本です)
- 送達証明書(公正証書を公証役場から送り相手に届きましたと証明するものです)
- 資格証明書(強制執行先である相手の会社など住所等が記載された商業登記事項証明書のことで、法務局で取得します)
- 当事者の住民票・戸籍謄本等(離婚公正証書作成後、住民票等を移動した場合必要となります)
この4つの必要書類をまとめるのと、残り以下の書類を作成する必要があります。
- 表紙
- 当事者目録(債権者・債務者の住所等を記載します。相手の給料を強制執行する場合は法務局でその勤務先の登記簿謄本(全部事項証明)を取得して記載します)
- 請求債権目録(書式は地方裁判所のHPからダウンロードできます。請求する金額を記載します)
- 差押債権目録(書式は地方裁判所のHPからダウンロードできます。支払いを確実にするための物です。金額・相手方の勤務先を記載します)
これらを全部あわせて1つの本のようにして、裁判所に提出します。記載漏れがないように注意し確認しましょう。
裁判所に債権差押え命令の申し立てをする
書類がそろったら、相手の勤務する会社の住所地の地方裁判所の執行係に書類を提出して申し立てしましょう。
ここで、費用として2つ必要となります。
申立手数料(収入印紙) 4,000円
郵便切手代
債権差押え命令の送達
申立て後、判所から相手方と第三債務者(給与の場合は勤務先会社、預貯金の場合は金融機関)に差押え命令が送達されます。差押え命令が送達されたら、申立人に送達通知書が届くので、必ず確認しましょう。
差押えがうまくいったら、お金を支払うようにあなた自身が直接相手が勤務する会社と話をしないといけません。
以下の内容について話し合って下さい。
- 養育費分を給与から天引きするか
- 天引きした給与を申立人のどの口座に支払うか
取立完了届けの提出
相手の給与や預貯金から養育費を振り込まれ取り立てを行われたら、裁判所に取立(完了)届を提出しましょう。
給与債権は一度の差し押さえてでOK
ちなみに、給与債権は一度差し押さえてしまえば、毎月差し押さえる必要はありません。
翌月以降発生する将来の給料に対しても差押えの効果が及びます。
もっとも、相手が退職してしまうと、差し押さえの効果はなくなってしまいます。
給料を差し押さえるメリットは、自分の請求債権額を満たすまで、毎月継続して回収することができる点にあります。
なお、給料の差押えは会社に通知されることになるので、支払いがない時点で給料を差し押さえる旨を相手に通知すれば、あきらめて支払いに応じることも多いようです。
養育費をもらうのは子供の権利です。
離婚前にきっちりと認諾条項付公正証書を作成し、子供の未来を守る手助けをしましょう。